独立して開業を志すエンジニアへのアドバイス

慢性的な人材不足に悩まされるIT業界では、比較的開業が容易だと言われており、独立して開業を目指すエンジニアは少なくない。開業の手続き自体は簡単で、税務署へ開業届けを出せば誰でも開業できる。
個人事業主として開業すれば、経費として計上できる範囲が広がり、自分に合った仕事を選んで好きな時間に作業できるのが魅力だ。会社との雇用関係が解消され、指揮命令系統に従う必要もなくなり、自由な生活を満喫できるだろう。だが、独立して開業すると会社の後ろ盾を失い、社会的信頼性をイチから築かなければならない。
社会的信頼を得るためには実績を積むことが不可欠だが、開業したてのエンジニアは実績が皆無だ。そのため、実績のない個人事業主に発注してくれる企業を探さなければならないが、このようなクライアントを見つけるのは困難と言える。
そこで、クラウドソーシングやエージェントを通して仕事をこなし、実績を重ねてクライアントに認めてもらうことから始めるしかない。複数の仕事をこなすうちにスキルを認められたら、個別に仕事を依頼される可能性もあるだろう。
クラウドソーシングやエージェントは、初心者でも取り入れやすい。しかし、単純作業の低単価の案件を引き受けているだけでは、実力を発揮する機会が少なく、なかなか個別の依頼を受けるまでには至らないだろう。そこで、仕事の紹介につながる人脈を築くことが必要だ。
IT業界の場合、同業者の会合に参加しなくても、ネット上のコミュニティに参入できれば同種の個人事業主と交流できる可能性が高い。エンジニアは、インターネットを駆使して仕事をすることが多いからだ。

個人事業主になる際の開業届

エンジニアが個人事業主として仕事を始める際に、必要な手続きの一つが開業届の提出だ。正式には「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」といい、新たに事業を開始するときだけでなく、事業用の事務所や事業所の新設、増設、移転、廃止、または事業自体を廃止した際に必要となる。
事業開始などの事実があった日から、1月以内に税務署に持参するか、送付により提出しなければならない。提出する際の手数料は不要だが、郵送の場合は送料が必要だ。提出書類にマイナンバーを記載するため、税務署へ持参の場合は本人確認書類を提示、郵送の場合は写しを添付する。
また、開業届には職業を記入する欄があるため、「システムエンジニア」「ネットワークエンジニア」など、事業内容がわかりやすいように記載をしよう。屋号を記入し登録すれば、銀行口座の作成や領収書の受け取りが屋号名義で可能だ。
そして、開業届の提出には2つのメリットが存在する。1つ目が青色申告を選択することで、確定申告の際に最大65万円の青色申告特別控除が受けられるようになるのだ。複式簿記による記帳の手間は必要だが、白色申告でも帳簿の記入と保存が義務付けられているため、可能なら青色申告を選んで節税する方が良いだろう。
2つ目のメリットは、屋号名義の事業用銀行口座が開設できることだ。屋号入りの銀行口座があれば、プライベートで使用するお金と、事業用の収入や経費を分けて管理できるため、経理作業が効率的に行える。さらに、個人口座よりも取引先から信用されやすくなる点もメリットと言えるだろう。